小説 RYDIEN(ライデイン) プロローグ4

 4:友達、だったもの

 

「響」「晃」

 名前を呼ばれて、振り返る。

 井村里利と相田正孝。

 小学校から高校までずっと同じ学校の二人。

 かつては友人……友達だった。

 頻繁にこの二人とはつるんでいることが多かった。仲良し三人グループと言うやつだ。

 だが二人が付き合うことになって、それから疎遠になった。

 とどのつまりは、二人が付き合うことになり俺が邪魔になったのだ。

「なに?」

 とりあえず返事をする。もうずっと話したことすらなかった二人が珍しくも俺の前に現れたのだから、何かあるのだろう。

 里利が言ってくる。

「もうすぐ文化祭だよね」

「ああ、そうだな」

「生徒会でさ、ちょっと人手が足りなくて、協力して欲しいの」

 里利は両手を合わせて、お願いのポーズをとる。

「みんなが楽しい文化祭に出来るように、お願い、手を貸して」

 この俺が? 誰かを楽しませるために汗を流す?

「はっ、この俺がか?」

 思わず鼻で笑ってしまう。付き合ったとたんに切り捨てられ、都合があるのかと思えば生徒会のパシリか。俺をなんだと思っているんだ?

「断る」

 言いたい愚痴は山ほどある。この学校に入学してすぐに二人は生徒会に入った。だが俺は呼ばれなかった。

 それで人手が欲しくなれば掌を返して「お願い」か。

 心底、腹の底から吐き出したくなるほどくだらないと思う。

 二人がいきなり付き合い出した経緯を問いたださなかった事も、俺の前から離れ去っていくこの二人に何の詮索も追及もしなかった事も、俺のその時の気持ちも、この二人には分からないだろう。

 静かに見送ってやったんだ。

 それぐらい察しろよ。

 今さら目の前に現れるな。

「寂しい事言うなよ晃。前みたいにさ、三人でつるんで楽しくやろうぜ」

 お前が言うな。

「そうだよねー。あの頃は楽しかったもんね」

 ああそうだな楽しかったな。そしてそれを壊したのはどこの二人だ。

「だからよ、お前も生徒会に入って――」

「断る」

 勝手にやってろ。

「俺は知らん」

「響、何を怒ってるの?」

 分かってもらわなくてもいい。

「うるさい」

 イラつく。煩わしい、腹の中の者をぶちまけてやりたい。

「俺は生徒会には入らない」

「どうしてなの?」

「俺はな――」

 突然、景色が暗転した。

 言葉を止めて、二人のあっけにとられた顔を見る。その視線は俺にではなく、俺の背後に向けられていた。

 俺も振り向く。

「なっ!」

 巨大な犬? 巨大な狼? 輝くほど真っ白い毛で覆われた巨大生物が、こちらをのぞきこんでいた。

 教室内のほかのクラスメイトも何事かと騒ぎ始める。

 そして――

 まるでじゃれ付いてくるかのように、その巨躯の前足を俺たちの教室に叩き込んできた。