小説 RYDIEN(ライデイン) プロローグ6

 6:Ry

 

「まずはアナタの読解力がどれくらいあるか分からない。だから色々省いて簡単に説明するわね」

 彼方と呼ばれたウェーブヘアーの少女が、無表情のまま淡々と言ってきた。

「歩きながら話しましょう。こっちへ」

 そう言って、俺の返答を聞かずに彼女は田中島砂丘へ入っていった。

 俺も後に続く。というか、それしか選択肢が無かった。

 

 ザク……ザク……ザク……

 地名が砂丘なだけに、砂浜はかなり広かった。砂漠のように隆起した砂山を、小登りする感覚で歩く。

 膝がきついんだよな。

 巨大な犬のような化け物。俺をここまで連れてきた赤木湊、特務ニ尉という階級。自衛隊……そして海へ向かっているこの状況。

 流石にどんな鈍感でも分かるだろう。

 俺は何かしらの理由で、あの巨大生物と、昨日遠州灘に落ちた隕石とで関係がある。

 今の状況で言えば、漫画やアニメのお話などの序盤という所だろう。

 そんなはずは無い。と、思いたいのだが、流石にこの状況ではそんな作り話的な事を鵜呑みにしないとならないのだろう。

 そんな事を思っていたら、前を歩いていた彼方という少女が口を開いた。

「その昔。大昔に、今の現代科学技術をはるかに超えた文明があった」

 オーケー。少なくとも俺は正常である。よりにもよってここからメタ話ですかい。

「あまりにも発達した科学字技術を持ったその文明は、ついには『神』をもその手で作ってしまった」

 ツッコミどころ満載。どこからツッコめば分からんほどだ。

 よって俺は正常である。再確認。

「そしてその文明は、多元世界……並列する同時空内に存在する無数の世界の狭間に大陸ごと移動した。正確には、世界の破滅から逃れるために世界と世界の間に自分たちを封印したの」

 力説の所申し訳ないが、砂丘の中は風が強くて、話が途切れ途切れでしか聞こえない。

「そしてその文明が作った『神』……ライが、いくつもの多元世界へ散っていった」

 なんだって? ライ? ラー? どっちだ。

 発音がライとラーの中間のような声に聞こえた。

「ある世界では、敵対する知的生物から人類を守りぬいた勇者となった。また別の世界では、十人の人間に自分の力を与えて、人類が存続するにたるかを試した審判者になった。さらにまた別の世界ではその世界の歪みを正す調律者だった」

 砂丘を抜ける頃、空と海の境界線が見え始めた。だがここから見えていても、実際はまだもう少し遠かった。

「そしてこの世界にもライ……作られた神がいた。それは一度地球を離れ、天文学的な超計算によって昨日、再び舞い戻ってきた。正確には帰還した、と言ったほうが正しいかもしれない」

「…………」

 どうしようか? こんなトンデモ話を信じるのか? 信じられるのか? いやでも、さっき巨大な犬が現れて襲われたしなあ。

 ザザ……ザザ……

 波の音が聞こえる。相変わらずの生臭いにおい。

 そして彼方はくるりと回って俺と向かい合い。大海を背にして言ってきた。

「アナタには、この世界にやってきたライ……ライデインに乗り、この世界に現れる二十八種の地球獣と戦ってもらいます」

「…………」

「…………」

 えーとー、……うん。

 どうしよう?

 これは……どう考えても明らかな中二病である。